2017年6月15日木曜日

世界の残滓を旅して

私は私の世界の主人公であって、あなたはあなたの世界の主人公である。
私の世界は私の誕生と共に生まれ、私の消失と共に消えゆく運命を約束されている。
私に従属する世界を、けれども私は自由に操ることは出来ない。
私に出来得るのは、私が私としてあるがままに生きることだけだろう。
生の連続性が世界を豊かに潤し、生の刹那の輝きが世界を照らし出す。
私の世界は種々の場面で諸々の世界と接しており、世界と世界は時に激しく衝突する。
生者同士の衝突は過激なものになりやすく、死者との接触は穏やかで実りの多いものになることが多い。
死者の世界とはすなわち死者の世界の残滓(あるいは残心)であり、死者の世界そのものではない。
生者の世界もやがて残滓を遺して消失する。
そうして積み重なった世界の残滓を掘り起こして学びを得ること。
それこそが学問という営為の基本であり、歴史に学ぶという態度なのではないか。
ふとそんなことを思った或る日の午後のこと。

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