2017年1月27日金曜日

男女のこと

あまり深入りするつもりはないけれど、覚え書。

最近、相次いで女性の書く赤裸々な文章に触れて色々と衝撃を受けた。
・文月悠光「洗礼ダイアリー」「適切な世界の適切ならざる私」
・佐野洋子・西原理恵子・リリーフランキー「佐野洋子対談集 人生のきほん」
・山口果林「安部公房とわたし」
TLで話題になっていた本で未読だが「夫のちんぽが入らない」という本もあった。
これも女性の著作。(当たり前か)

文月悠光の文章の繊細さはどこか自分の内面を強く刺激した。
多分感性が自分によく似ていて、追体験していると何だか重なり合うような錯覚に陥るのだと思う。
まだ若い詩人が今後も伸び伸びと飛翔していくことを期待したい。
彼女の語る幼少期からのエピソードは共感する部分も感心する部分もあって、とても親しみを感じた。

佐野洋子と西原理恵子の対談は私を混乱させた。
余に躊躇なく赤裸々に語られる他人の人生に、自分の心が襲われているかのようでしんどくなった。
随分と大胆に強烈に自分の人生を能動的に生きている人だと思った。
強烈すぎて、後に収録されているリリーフランキーとの対談はほとんど印象に残らなかった。

山口果林のことはこの本を目にするまで知らなかった。
てっきり若い奥方が著したものと思って読み始めたら、妻帯者と年若い恋人の関係だと知って少し呆れた。
妻と恋人の関係は複雑なものだと思った。
勿論ここに描かれているのはあくまで一方的な見方でしかないわけだが。
関係の露見にショックを受けつつも、その後、自分と安部の関係がなかったかのように扱われたことに不満を抱くなど、微妙な気持ちも赤裸々に綴られていて面白いと思った。
おそらくこの本を世に問うことを通じて自分の人生に一区切りをつけたかったのだろう。
男女の関係というのは後まで尾を引くものだと思った。

村上春樹のロングインタビューを「考える人」2010年夏号で読んだ。
自身の著作について大分踏み込んで発言していて興味深かった。
特に河合隼雄への傾倒や日本に対する複雑な思いの吐露には意外な部分と納得する部分があった。
ただ女性に関して、小説を書いているうちに段々わかってきたと自信を覗かせる部分があって、そこは少し胡散臭いな、と思った。
彼の中での女性理解が深まったとして、本当にそれは生身の女性理解なのだろうか、と。

男性、女性、と言ってもそれこそ星の数ほどの人間が暮らすこの星で、確たる理解はどうしても不可能で、男が女に、女が男に抱く幻想を打ち破ることは不可能だと思う。
けれど、せめて共に人生を過ごす人々のことは男女の壁を越えて人として理解していきたいと思うが、それすら大それたことなのだろうか。

男女を区分しすぎる議論も、男女の別を無視した議論も間違っていることは体感されるけれど、何がふさわしいかは判断が難しい。
切っても切り離せない人間の性について否応なく考えさせられた一連の読書体験だった。

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