2017年3月10日金曜日

演出術―蜷川幸雄

演劇の言葉には何か、言葉では説明できない力を感じる。
考えてみると言葉というのは元々、話し言葉であり、小説や論文が人々に受け入れられるよりもずっと前から、演劇という言葉のあり方は存在していた。
そうした長い歴史のなかで、役者たちが、演出家たちが、そして観客たちが一体になって追求してきた何か。
それこそが演劇の力なのかもしれないと思った。

惜しまれつつ亡くなった稀代の演出家、蜷川幸雄のインタビューをまとめた本。
彼の言葉を聴いていると(読んでいると)シーンが目に浮んだり、心が動かされたり、強い言葉の力を感じる場面が多かった。
長年、演劇と体当たりで向き合って来た人だけに、演劇の持つ混沌とした力が本人にまで乗り移っているのだろうかと半ば本気で思った。
一度講演会を聞いたことがあって、そのとき以来ファンを自認していたものの、結局生の舞台を見る機会は失ったまま逝かれてしまった。

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